葉菜類が少ない                               −自然の理に叶った農と食のあり方を考えてみる−

最近「宅配に葉菜類が少ない」と言われます。確かにその通りです。でもスーパーに行けば青々としたきれいな葉菜類がいっぱい並んでいます。その違いはなぜなのでしょう。

私たちの畑は全部露地栽培でハウス栽培をしていないのです。露地栽培は季節に合わせてできる野菜しか作れません。ハウス栽培は自然の温度を人工的に変えて、季節をずらした野菜づくりをするのです。ですから季節はずれのいろんな野菜がスーパーに売られているのはそのためです。

季節に合った野菜とはどんなものなのでしょうか。野菜づくりの立場からしますと一年は四季でなく、三季なのです。春秋・冬・夏です。春秋は気候が温暖ですから野菜は葉菜類が多く育ちます。夏は暑いので表面積が多くて水分の発散の多い葉菜類はほとんどなく、いわゆる”なりもの”のナス、キュウリ、トマトなどが花形全盛の頃となります。そして冬は寒く葉も実も大きく育ちません。寒い間野菜は辛抱して力を土中にためこむのが精一杯になるでしょう。冬は大根、人参、ごぼうなど根菜類の季節です。

季節に合った野菜には強い生命力があるにちがいありません。暑い時には暑さとたたかい、寒いときは風雪と寒さにたたかってきた野菜にこそおいしさと強さ、やさしさが貯えられてきます。それが自然の理ではないかと最近つくづく感じるようになりました。私たちの祖先はこの自然の理に叶った食べ方、生き方をしてきたのでしょう。そしてほんの少し季節をずらす食べ物として漬物、干物のような保存食を発明してきました。

今日のように、日本中のどこからでも、もっと広く世界のいたるところから食べ物がよせられる時代にはもうそんなことは考えなくともよいのでしょうか。「医食同源」とか「地産地消」とかの言葉には日本人の深い知恵が込められているように思えてなりません。食と農のかかわり、あり方を考えるひとつの大事なポイントだと思います。

文・増田 大成

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